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糖尿病と歯科

日本人のうち、六百万人は、居るのではないかと言われている糖尿病。でも、その怖さは軽視されがちです。そこで、この度、日本口腔外科学会雑誌に、糖尿病の存在の為に、重篤に陥った感染症の報告が有りましたので、ご紹介します。

出典: 頚部に発生したガス壊疽
小林 吉史、亀山 忠光、中尾 元紀 他
久留米大学医学部口腔外科学講座(亀山 忠光 教授)
日本口腔外科学会雑誌、43:634-636 1997

以下は論文の要約を私が書きました。

患者:62才男性 飲食業
主訴:右あごの下から、首にかけての腫れ。
既往歴:15年前より、糖尿病で、又2年前より心筋梗塞で内科加療中。
現病歴:初診日より5日前、右下の歯が痛いが放置。その後、口が開かなくなり、右あごの下迄腫れた為に、近くの歯科医院を受診。歯の根管治療と、抗生物質の投与を受けるも、症状の改善は無く、更に、食事も摂れなくなった為に、久留米大学口腔外科に紹介された。
治療経過:口腔外科に入院して、口の中から、切開して排膿させるも、熱は更に上がり、症状の改善は全く認められなかったばかりか、鎖骨の下迄、腫れが及び、更に呼吸困難も生じはじめた。そこで、ICU(集中治療室)に転科。そこで、広範囲に首の周りを切開して、排膿させた。内部は暗黒色で、壊死(腐って)していた部分が 有り、その腐った組織を可能な限り、除去して、洗浄を繰り返した。

結局、2ヶ月の入院で、糖尿病のコントロールも良くなり、何とか傷も癒えて退院となった。

解 説

この症例は、クリストリジウムと言う細菌が原因で、ガス壊疽と言う病体をとったものです。
つまり、感染してしまったところの組織が腐って、腐敗臭を発生させる訳です。
又、この細菌は、土の中に多く、正常な人の、消化管や、呼吸器にも存在するそうです。
しかし!普通はこの様に、感染して発病する事は希です。

やはり、この場合は、重篤な糖尿病が有った為に、発病して、更にひどい炎症になってしまった事が重要です。
普通の人ならば、炎症で、組織が腐ってしまって、除去しなければならない事は、よほどでなければ有りません。
だけれども、糖尿病の人は感染し易く、炎症もひどくなると言うことを医療関係者のみならず皆様も認識していなければならないと思った症例と言えます。

追補:2020年、現在では、口腔内が不潔、特に歯周炎(歯槽膿漏)の場合には、糖尿病が悪化し、逆に歯周炎が改善すると、糖尿病が改善すると言われています。

資 料

糖尿病は、神様が人間を作った時、血糖を下げる回路を一つしか作らなかったから起こるのです。血糖を上げる回路は一つ以上ありますが、下げる方は、一つの為、壊れてしまうと、人工的に薬剤の注入等が必要になります。
飛行機には、油圧系統が3つ位あって、どれかがこわれても、大丈夫になっているのですが、それとは違うのです。

血糖を下げる回路は膵臓と言う”たらこ”位の臓器の中のランゲルハンス島と言う部分のベーター細胞で作られる、インシュリンと言うホルモンによって成されています。このベーター細胞が駄目になってしまうと、糖尿病になる訳です。

痩せている人も、太っている人も”たらこ”の大きさは変わらないそうですので、当然、太っている人は、沢山食べる訳ですから、インシュリンも沢山作らなければならない訳です。つまり”たらこ”が疲れてしまうのです。加えて、糖尿病の遺伝因子を持っていますと、糖尿病が発病し易くなって来るのです。
親兄弟に糖尿病の人がいれば、リスクは相当高くなりますので、働き盛りの人は暴飲暴食は絶対に避け、ジョギング程度の運動は、毎日必要だと考えられております。

国内の糖尿病患者の数は、約600万人位居るのではないかと推定されています。40歳以上が500万人位で(何と、40歳以上の1割が糖尿病!!)40歳以下が100万人だそうです。40歳以上の糖尿病のほぼ9割以上がインシュリン非依存性糖尿病(Ⅱ型)で、所謂、生活習慣病と言われています。その中で、糖尿病の治療を受けている人は100数10万人だそうで、残りの400万人以上の人は自覚症状が無いか、放置している人だそうです。

Ⅰ型の糖尿病は、生活習慣とは関係無く主に若年者に発病してしまうインシュリンの注射が生活して行く上に欠かせない、Ⅱ型とは別の糖尿病です。

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