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エムドゲイン

エムドゲインゲルを使った歯槽骨の骨再生

キーワードエムドゲイン エムドゲインゲル 歯周病 骨の再生 エナメルマトリックス

歯周病の中の歯周炎にかかりますと、歯を支えている骨が吸収して段々と歯が動いてまいります。その失われた骨を再生する事ができるようになってまいりました。
それを可能にしたのは、GTR法とエムドゲイン法です。GTR法とは、(Guided Tissue Regeneration)1980年代の半ばに登場した方法で、簡単に言うと、骨の無くなった部分に、医療用のゴアテックスの皮膜を設置して、骨を再生させようとする方法です。ただ、この方法は、難しいのです。それは歯肉の下にそーっと ゴアテックスの膜をはさんで縫合するのですが、欧米人に比べて歯肉が薄いアジア系の人種の場合は 手術は煩雑になるばかりか、術後、何日かして膜が露出してしまったりする事があるのです。当然そうなりますと、感染してしまったり して、骨はできません。そんな時に登場して来たのが、エムドゲインと言う物質を使う歯槽骨の再生療法です。

追補:2016年11月にトラフェルミン(商品名:リグロス)と言う日本で開発された歯周再生治療剤が保険適応となりました。用法も殆どエムドゲインと変わりません。骨再生機能も良い様です。エムドゲインやGEM21Sの場合健康保険には使えない薬剤で、混合診療と言う壁があり簡単に使用する事ができませんでした。しかし、リグロスは健康保険で問題なく使用できます。健康保険での場合は、7割を保険者に払って頂けます。よってリグロスを使った場合の自己負担は8千円程度、歯周組織剥離ソウハ術を2歯に行ったとしても、患者さんの負担額は1万3千円程度になります。この様な最先端の歯周病の治療薬を健康保険の収載に努力して頂いた関係者に敬意を表します。

エムドゲインとは

スウェーデンの幼弱な豚の歯の芽(歯胚と言います。)から抽出したタンパク質の1種です。エムドゲインは商品名で、エナメルマトリックスデリバティブこれが一般名です。

スウェーデンのビオラ社で開発生産され世界40カ国以上で使用されておりますし、莫大な数の論文が世界中で発表されております。そしてこれは日本の厚生労働省の承認がなされておりますが、健康保険診療の適応にはなっておりません。

見た目や性状は、サトイモの煮汁にそっくりです。(鍋の底にたまったドロドロしたやつです。)

エムドゲインとは

どの様な作用でしょうか

歯が生えてくる時と同じ環境を作りだすことによって、再度骨を歯の周囲に呼び込んで骨を再生させます。

どんな歯周病にも使えるのでしょうか

それは、ノーです。部分的に骨が吸収してしまった場合しか効果はありません。つまり歯の周囲360度の骨が水平的に下がってしまった様な場合の骨を再生させる事はできません。

使う前の準備は必要ですか

基本的な歯周病の治療が一通り終わっている必要があります。つまり歯ブラシがしっかり使える様になっている事及び、歯石の除去等が終了している事です。逆を 言いますと、歯ブラシの使い方が悪い場合や、きっちりとした歯周病の治療ができていないと、このエムドゲインを使っても意味がありません。尚、きちっとした歯周病治療とは、歯ブラシの正しい使用法を理解し、その上に、エムドゲインを必要とする部分の様な場合、局所麻酔をした状態において、しっかり歯石が除去されていることを意味します。

実際の使用方法

歯茎を切開して、歯の面を徹底的に掃除をしてから、酸処理をしてエムドゲインを塗布後に縫合して終わりです。GTR法よりは簡単ですが、ある程度縫合をしてから エムドゲインを塗布しないと、サトイモの煮汁状ですので、塗布してから縫合していると流れ出てしまいます。あと、何と言ってもこの段階で、沢山の歯石が残っている 様では上手くいきません。この前の段階で殆どの歯石をとっておく必要があります。

術後のケア

1ヶ月位は、歯間ブラシや、デンタルフロスでつつく事をしてはいけません。そーっとしておくことが重要です。周囲を磨く事はかまいませんが、あくまでもエムドゲイン を塗布したところはつつかないようにします。補助的な手段として、クロルヘキシジンを含有したコンクールと言うウガイ薬やリステリンを使っていただきます。そして 定期的に来院していただいて、歯科衛生士がその部分をさわらないように、掃除をします。

歯周病は慢性病です。エムドゲインを使って骨を再生させても、その骨を溶かす細菌が増えだす環境ですと、本末転倒になりますので、定期的なポケット内の清掃は一生涯必要です。

実際の使用例をご覧ください
エムドゲイン使用前の歯の状態
エムドゲイン使用前のレントゲン

上図は、エムドゲインを塗布する前の骨の状態と、レントゲンです。歯の欠けている部分の下の骨が三角形に欠損しているのがわかります。

半年後のレントゲン写真です。何となく三角形の黒かった部分が淡くなって、何となく骨が形成された様な感じになってきました。(歯茎をめくってみて骨が出来たのだを しらべればわかりますが、それはしていません。)

半年後レントゲン写真

問題点等と展望

ぐらぐらの歯の動きが止まるほどの骨はできない。適応症が限られる。 安全(世界中の約40カ国100万人以上で使用され、副作用の報告は無い)とは言え、生物由来の治療用材ため、患者さんに対して説明して、同意してもらう必要がある。
健康保険の適応になっていないので、これを使う場合の診療行為は、すべて保険適応外になってしまう可能性がある。(←是非とも改善してもらいたいです)
1mlのサトイモの煮汁みたいなものが、数万円もする。
新しい素材として、繊維芽細胞成長因子(FGF2)と言う物質による歯槽骨の再生も研究されており、治験が終われば発売されるそうです。

米国では、エムドゲインの様に生物由来でなく100%化学合成された物質で、歯槽骨を再生させる能力を持つGEM21Sが2005年から発売されています。これはかなり良い様ですが日本で厚生労働省の認可が下りるかは不明です。ただ、これはエムドゲインよりはるかに高い!!。
詳しくはこちら→GEM21S

当院は、日本における歯周病の権威である弘岡秀明先生に歯周病の治療方法、エムドゲインゲルの使用法やその実習を受けました。

追補:2017年に上記の線維芽細胞成長因子がとうとう発売になりました。しかも保険適応となりました。製品名は「リグロス」データーによるとエムドゲインよりも良い、または同等の効果とされています。このリグロスの良いところは、何と言っても生物由来ではなく化学合成品なので、未知の感染症に感染する事は有り得ない事です。もうこれからは、エンムドゲインは使う事は無いのではと思います。ただしエムドゲインもリグロスも、水平的に骨が吸収してしまった部分を再生させる事は困難です。
リグロスですが実際に使ってみた感じですが良い様です。ただ長期予後は見ていませんので、経過を観察して行きたいと思います。

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